夕暮れの家庭科部の部室、私とリキは二人っきりでお茶を飲んでいた。 「クド」 「何ですか?リキ」 「好きだよ」 優しい笑みを浮かべながらそう言った。 「私もですよ。リキ」 私も、心からの笑顔を浮かべながらそう返した。 それは、私が願っていた光景。恋人たちが作る甘い時間。 その時間の中の私は、幸せで一杯だった。 「キス....しようよ」 リキが言う。 「....はい」 少し照れながらも答える私。 「じゃあ....目、閉じて」 言われた通り目を閉じる。こうしている間も自分の心臓が激しく音を立てる。 リキの顔が近づいているのが分かる。心臓も激しさを増す。 リキの吐息が掛かった。心臓もいよいよぴーくに達してきた。 リキの鼻息が聞こえた。唇まであと数センチ_________ ___________目覚ましの音が豪快に鳴った。 理由は分かっている。分かりきっている。 あんな夢を見た後だからか、勢いで作ってしまった。 後悔。激しく後悔。どう頑張ったて後悔。 やっぱり勢いだけで行動するものではないなと思ったり、 勢いだけで行動するのは、三枝さんの役目ではないかと思ったり、 嗚呼今自分は三枝さんと同じ様な事をしているんだな、 だったら(色んな意味で)大きくならないかなと思った所で 「何をなさっているのですか、能美さん」 西園さんの声で我に返った。 ... ..... ....... 「で、何をなさっていたのですか?」 「出来れば聞いてほしくなかったです...」 「朝早くから部屋を抜け出し戻って来たと思ったら 私の机の上でお弁当箱をふたつ並べて頭を抱えながら 何やら呟いている人を見て質問をするなと言うのが無理です」 「わふっ」 弁明の余地なし。私だってそんな人を見たら絶対に同じ質問をする。 「まぁ...大体の察しはつきますが......」 「?」 ゆったりとした動作で西園さんが学校へ行く準備を始める。 「能美さん」 「はい?」 「後は、お互いが気付くだけですよ」 「???」 「失礼します」 そう言って西園さんは、先に学校に行ってしまった。 「..........」 取り残された私、西園さんの言っていた意味はよく分からなかったが、とりあえず 「私も準備をしましょう」 現時刻7時45分、学校行くの早すぎです西園さん。 とりあえずお弁当は後回し、 私は何時もより少し遅く、準備を始めるのだった。